浅葱色の約束。




おもちゃを買ってもらえなくて駄々をこねるような。

帰りたくない、と本能のままに喚くような。

そんなものだった。



「嫌だ。」



なにが、どうして、嫌なのか。

そんな難しいこと全て考えていなかった。


ただ嫌で嫌で、嫌。



「梓」


「嫌だ、」


「あず───」


「嫌だ…っ」



どうしてそんなこと言うの。

まだ、分からないのに。

労咳は治るかもしれない。
お医者さん全員に診てもらったわけじゃない。


例え死病だとしても、もしそれが誰かが作ったデタラメだとしたらどんなにいいだろう。



「いやだ…、」



「嫌だ」しか話せない子になっちゃったのかな。

それでも口から出るのはそれしかなくて。

初めて自分が駄々を捏ねていることを知っているのは沖田さんだけで。



「未来のことなんか誰にも分からないよ沖田さん。…治るかもしれない……労咳は、」



───未来では治るんだよ。



「治らないよ。…治らないんだよ梓」



納得してしまった。

言葉が出なかった理由は、きっとそんなものだからだ。


私はとっくに、この時代に生きる人間になっていたから。

そうなりたいと願っていたのは自分だから。



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