浅葱色の約束。
沖田side




「ゴホッ、ケホッ…」



風邪かな?少し冷えたかな?

そう思えていた時が懐かしく思う程に今は日常茶飯事になってしまったその音。


それでも僕だって寝たきりというわけにはいかない。

日中は出来るだけ稽古にも参加するし、体調が良さそうなら巡察にも同行する。



『いやだ…っ』



数日前に見た、今にも泣きそうなあの顔が未だに脳裏から離れてくれない。

僕があんな顔をさせた。

あの子の笑顔を一番最初に見つけた男が、今度は泣かせてしまったらしい。



「───誰か居るのか?」



誰も居ない道場。

寝静まったそんな場所で、僕は一心不乱に木刀を振っていた。


昔から何か心を乱すものがあったときは、こうして何も考えずただ振り続ける。

そうすると次の日にはスッキリすることが多かったから。



「…近藤さん」


「総司!こんな時間に何をしているんだ!」


「ったく、休めっつっても休まねえのがお前だよな」



あなたにだけは言われたくないですよ土方さん───と、呟いた僕に近付いて来る2人。


明日から土方さんは斎藤君と江戸へと向かい、隊士募集を募るらしい。

しっかり体を休めた方がいいのは副長のはずなのに。



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