浅葱色の約束。
「…梓、…泣いていませんでしたか」
昔からの顔馴染みが3人集まったというのに、会話の内容は少女のことだった。
あの子はもう仲間以上の存在、もしかすると土方さんも近藤さんも新撰組と同じくらい大切に思っているんじゃないか。
…それは僕もかもしれないけど。
「お前のことが嫌いだっつって大泣きだ。
…あいつの誕生日に何を言いやがった総司」
思わず木刀を振る手を止めて、スッと真下へ下ろした。
やっぱり泣かせてしまったんだ…。
僕の前では涙を流さなかった梓は我慢していたんだと。
近藤さんも全て土方さんから聞いているのか、僕をただ優しく見つめるだけだった。
「…喧嘩です。ただの兄弟喧嘩」
「ほう、それでお前も泣いてやがるのか」
「───…え…?」
気付いたときには遅かった。
ポタリポタリと流れるものは、静かな道場の床へ容赦なく落ちてゆく。
じっと見つめてくる瞳に映る青年は珍しくも泣いていて。
「宗次郎(そうじろう)。…お前は昔から何も変わっていないよ」
かつて土方さんから言われた言葉を、今度は近藤さんが言って来た。
どうして嫌味として受け取れないんだろう。
涙がもっともっと溢れては止まらない。