浅葱色の約束。
俺も近藤さんも自分より下の兄弟は居ないからこそ、どうしたらいいか分からない。
夫である男は異様な空気感と未だ聞いたことのない妻の悲鳴に、気を失って壁にもたれ掛かっている。
ったく、あの腰抜けが。
「あかんわ全然出てこん…、このままだと赤子が酸素不足で死んでまう…!」
「俺達はどうすりゃいい」
「誰か腕の細い子を連れてきてくれまへんか…!母体の中に腕を突っ込んで赤子を出すしか方法がもう無いわ…!」
そんなこと、出来るのか。
そんなことしちまったら母体が危ないだろう。
腕の細い奴…、
こんな男ばかりの場所にそんな奴は───…
「…1人、いる」
「ほんまですか!?ならはよ連れてきてください!」
「だが母体はどうなる」
汗を拭くことしか出来ない俺達は、懸命に呼吸と悲鳴を繰り返す女を見つめることしかできない。
この女の体力が一番だ。
もしこいつが死んだら残された子はどうなる。
父親は命の保証の無い武士だ。