浅葱色の約束。
親の愛情を知らない、可哀想な子になっちまうんじゃねえのか。
笑い方も知らないような。
『───寂しいってなぁに?』
純粋無垢な瞳の中にある、冷たさ。
あいつのような子供になっちまうんじゃねえのか。
それだったら最悪の場合そっちのが良いとも思った。
あんなにも寂しい人生を歩ませるくらいならば、もしここで中断出来るならばそれで。
「お願いします、私は大丈夫ですから…っ、どうか、どうか赤ちゃんを…っ!」
汗で滑りそうになりながらも、しっかりと俺の腕を掴んでそう言った女。
母親っつうのは強いんだな…。
どうやら俺は最低なことを考えていたらしい。
「近藤さん、梓を呼ぶ」
「だ、だが…!」
「大丈夫だ。あいつならやってくれるよ」
細っこいし、それでいて女。
この機会にこれほどない助手だ。
あいつはもう何も出来ないようなガキじゃない。
命令の上でしか動けないような子供じゃない。
俺達が行って来い、と野に放たなければ走れないような子兎ではないのだ。