浅葱色の約束。
「ここに……腕…?」
「そうや。赤ちゃんが居るんや」
「そんなの、出来ないよ…」
駆け付けた梓は絶句したように立ち竦んだ。
なにがどうなってこの状況なのか理解させることも重大だったが、すぐに俺は手拭いを被せて手を洗わせる。
寝そべる女の前にしゃがむと、隠された中の状況にゴクリと唾を飲んだ梓。
俺達は見えないようにされているが「足が出ている」と、女中は言っていたのだ。
そこには想像も出来ないような光景があるはず。
「やらんかったら赤子は死ぬんや!母親も危険な状態になるんやで!!」
「…やったことがない、赤ちゃんなんか…触ったことないよ」
「あんたしか救えないんや!!」
「だから出来ないんだって……!!」
そんな声はもしかしたら初めてかもしれない。
不安から出たこいつの叫び。
こいつは今、全てに戸惑っている。
赤子への力の加え方もわからないで、もし潰してしまったらと。
それでいて自分が手を加えたことで死んでしまったら。
小さき尊い命を前にして、梓はどうしたらいいか分からなくなっている。