浅葱色の約束。




そんな梓を見た近藤さんは目に涙を浮かべていた。

そりゃそうだ、俺も思わず込み上げてきそうになった程だったのだから。


こいつが今、新しい命を繋ごうとしているのだ。

愛情を知らなかったこいつが1つの家族を助けようとしている。


ビチャ───ッ!!



「っ…!」



そんな梓の目へと向かって、中から血が飛び出した。

一瞬怯んだそいつにすぐに近付いて、付着した血を拭ってやる。



「視界は見えるか」


「うん、…大丈夫」



それでも気にすることなく手を伸ばし続ける梓。

母親の悲鳴と異様な音。

そんな中で震える手を一生懸命動かす。



「頑張れ梓…!」



近藤さんもさっきからその言葉を繰り返していた。

すると梓は何か違和感を見つけたように、震える瞳で俺を見た。



「…引っ掛かってる…、手が、引っ掛かっちゃってる…」



もう時間はない。

数回酸素を吸う赤子の音は聞こえたが、母親の様子もぐったりしていて。

本当に時間との勝負。


最悪、両方助からない場合もある。



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