浅葱色の約束。
「───…なにを言っとるんだ梓」
そんなとき、俺の隣の男は拳を握りながら梓を見つめる。
近藤さんの静かな声は余計に少女を揺らがせた。
「だって…、中がどうなってるかわからなくて…」
「まだ生きているじゃないか」
近藤さんは俺ですら見ていない隠された場所へと移動し、震える少女の肩を支えた。
「見なさい。まだ赤子は動いている、息をしている。生きたいと言っているんだよ」
「…でも…、」
「この命は確かに小さなものだ。握れば簡単に壊れてしまうかもしれない。
しかしそこまで脆く弱いものでも無いのが命なんだ」
近藤さんには娘がいる。
まだ赤子の時に京へと登ってしまった為、その子にはそれ以来会っていない。
だからこそ、なのか。
娘にしてやれないこと、教えてやりたかったこと。
それを今、この男は梓へと受け継ごうとしている。
「命というのは心から生きたいと思ったとき───…とてつもない力を発揮するものなんだ」