浅葱色の約束。




「お前は何か辛いことないん?」


「私…?」


「ほら、いっつも怒られてるやん。お前は最初っから馬鹿みたいに優しいもんなぁー」


「…馬鹿ってなに」



桜をゆっくり見ることすら出来ず、中庭の薄紅色はパラパラと散っている頃。

朔太郎は物思いに目を閉じ、寂しげに笑う。



「…時間が流れるのってほんまに早いよなぁ」



咲ちゃんはどうしているのかな…。

それは私が自分自身を見ればわかる話なのだけど。

前みたいに体は透けることはない。
それはイコール、元気にやっているという証。



「でも朔太郎も私も、今もこうして話してる。───…前と変わらないね」



ふふっ。

みんな見ていないからこそ、こうして笑っていられる。

毎日ピリピリとした空気の中で場違いに微笑んでいたら、最悪殺されてしまうかもしれないのだ。


それくらいこの戦は長く続くもの。



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