浅葱色の約束。
「“私”、ねぇ…」
「あっ、違うの!これは…」
「ええよ。もう、わかってるし」
大袈裟に訂正することは出来なかった。
朔太郎は見たこともない表情を私に向けていて。
それはいつからか、どうして言ってくれなかったのか。
疑問はたくさん浮かぶけど、お互いにそれ以上を聞こうとはしなかった。
「朔太郎…?」
その手は私の頬に伸びてくる。
優しく撫でると、また初めて見る眼差しを向けていて。
「泥、…ついてたで」
「ありがとう。お風呂入らなきゃ」
「気ぃ付けや」と、朔太郎らしくない心配までしてくれてしまった。
その視線は下へと落ちてくる。
「だいぶ色褪せてるやん」
「…多分、たくさん汗とかついて」
「努力の証やもんな」
いつかに2人で購入したお互いの首飾りを見つめ、朔太郎は懐かしむようにはにかんだ。
あれから月日は経って、私は16歳になろうとしていた。
思い返せば色んなことがあった。
言葉では表せないくらいにたくさんのことが。
「沖田さんは元気…?」
「…元気やけど、自分も行かなきゃって毎日刀を見つめてるわ」
「…そう」