浅葱色の約束。
沖田さんもこの奉行所へ共に来てはいるが、公に顔を出したことは1度も無くて。
だから旧幕府軍の兵士は初めて新撰組を前にしたとき、それぞれが肩を落としていた。
『沖田さんは居ないのか』
そう言って戦力が落ちたと嘆く者だっていた。
それでも本当はこの場所にいる。
奥の小部屋で療養をしている沖田さんは、きっといつか出てきてくれると私は信じている。
あの日以来まともに顔を合わすことはしていないけど…。
たまにすれ違って挨拶を交わす程度で、それ以上もそれ以下でもない。
きっとあんな我が儘を言ってしまったから呆れられてしまったのだ。
「おーい、また寂しそうな顔してるで」
「そ、そんなことないよ」
「馬鹿やからすぐ強がるわ」
「だから馬鹿ってなに!」
スッと向かってきた両手は頬をふにっと引っ張ってくる。
出会った頃から朔太郎はいつもこうして私のほっぺを伸ばす。
そんな動きもまた、最初の頃より優しくなっていた。
「ばーか。お前はそうやって笑ってればええのに」
寂しそうな顔をしてるのは朔太郎だって同じだ。