浅葱色の約束。
「総司、お前は近藤さんと大坂城へ行け」
静かに淡々と命令を下した副長。
それは、もう沖田さんを匿う余裕が無いということだった。
「…僕はもう用済みってことですか?」
「体治してから戻って来い」
「はっきり言えばいいじゃないですか。病人は要らないって」
ははは───…。
空元気な笑い声が響くと、部屋はいっそう静寂が包んだ。
隣に立つ拳が固く握られている。
それでも着物から伸びた手足は前よりもまた細く痩せていて。
「これは副長命令だ。」
「あんたはいつもそうだよ…。いざとなったら権力振りかざして…」
「聞けねえなら───」
「いい加減にしろ…!!」
ふっと私の隣から居なくなった青年は土方さんの元へ、珍しい程の声を上げながら近付いた。
「土方さんのそういうところが僕は昔から大嫌いだった…!!!」
ガッ───!
その胸ぐらを掴んだ沖田さんは今までに無いくらいの表情と荒ぶる姿。
でも、土方さんのその先の言葉は誰もが分かっていた。
彼はたとえ沖田さんが病気だとしても1人の隊士として扱っている。
「…離せ、今はこんなことしてる場合じゃねえだろ」
「…なんで…だよ、土方さん…」
それでも彼の心の奥からの悲痛な叫び。
誰もが胸を痛める光景にただ1人、土方さんだけは変わらない眼差しで見つめ続けた。