浅葱色の約束。
「僕は帰らない。僕は守られる為にここに居るんじゃない。
遠回しに言うくらいなら…使えないって正直に言われた方がマシだ」
「んなこと誰も言ってねえだろうが」
「言ってるじゃないですか、」
「俺は戻って来いと言ったんだ」
嘘などではない。
決して沖田さんを宥めるだけの言葉遊びでもない。
土方さんは本当に彼が戻ってくるのを待っている。
誰よりも沖田さんに病気で死んでほしくないと思っているからこそ。
「───梓。」
そして土方さんの口から次に出た言葉は私の名前。
皆の視線が注目して、沖田さんも私を捉えた。
「てめえも選べ。ここに残るか近藤さんと一緒に大坂に行くか。ここに残るならお前も覚悟をしろ」
───私の命は保証しないと言っているのだ。
自分の命は自分で守れ、と。
私の役目は一体何なのだろう。
「土方さん俺は…!」
「お前は一応残れ。いつ戦に出向いてもらうか分からねえからな」
「はっ、はい…!」
朔太郎はあの池田屋のときのように、私と共に行くとは言わなかった。
それは私が女だと知ってしまったからなのかな。
もう一緒に並んで走ることは出来ないの…?
それがどうしようもない程に悔しかった。
すると土方さんの胸ぐらを掴む沖田さんの腕は離れて、体に自由が戻ると副長は悔し紛れに落とす。
「これより俺達は───…撤退する。」
苦渋の決断だった。