浅葱色の約束。




私達に追い付こうと走る男が銃で撃たれ悲鳴をあげる。

私が助かったから彼は撃たれた。


ごめんなさい…、ごめんなさい……。


ただ脳裏は謝罪を繰り返す。



「土方さん…!あの人が……!!あの人が…っ」


「死にてえのかてめえは───!!!」



バタバタと逃れようとする私の体をガッシリ掴み、走り続ける。

戦の残酷さを目の当たりにしたとき、人は何も出来ない。


そして偽善者となる。

無力───…。

そんなものを体に刻まれるかの如く。


手も足も出ないまま命はどんどん死んでゆく。



「助けてください副長…!!」


「副長…っ!」



浅葱色をまとった昔からの仲間もみんな倒れていった。

その寸前、必ず土方さんの名前を呼ぶ。

助けて、助けてと命の終わりを惜しむ。


これが、戦。
これが戦争。



「───…あの…人…、」



足を引き摺って、それでも追い付こうとする1人の男は。

あの日、屯所で出産をした女性の夫。
あの赤ちゃんのお父さんだ。


どうしてあなたがここに…。



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