浅葱色の約束。
土方side




どうして置いて来なかった?

どうして俺は引き返してまでも足手まといのそいつを助けた?


何度、己の中で繰り返したとしても答えは返って来なかった。



「ぅぁぁぁ…っ」



腕の中で泣くそいつを抱え、俺はただ走った。

後方からも追っ手が来る中で新撰組に次なる試練が訪れたのは、それから暫くして。


ざわざわと男達は信じられないものを見るかの如く立ち止まって目を見開いている。



「あれは───…錦の御旗じゃないか…!?」


「おい嘘だろ……このまま行けば俺達は朝敵と見なされるってのか…?」


「賊軍ってことじゃねえか…!!」



やっと追っ手から何とか撒けたと思えば、目の前には赤色に包まれる月のような模様。

それはこのまま突き進めば俺達は賊軍と判断され、誰構わず殺される。

分かりやすく言えば朝廷に裏切られたと同等だった。


切り捨てられたのだ俺達は。



「土方さんどうする…!!このまま進めば無駄死にだ…!!」


「副長…!!」



皆して俺に判断を求めた。

こんなことがあるのか、錦の御旗なんざ本当に掲げられるってのか。


このまま全員で進めば馬鹿を見ることなど分かりきっていた。



< 275 / 464 >

この作品をシェア

pagetop