浅葱色の約束。
「土方さん、次は…もう助けなくていいよ」
腕の中で呟かれた独り言は、俺の耳へとしっかり届いた。
朔太郎にも聞こえていたらしい声は俺達に静寂を与える。
「もし次、…昼間みたいに転んだりしたら……そのまま走ってほしい。朔太郎も自分の命だけ考えて」
「なに言ってんねん…、お前あんなに泣いてたやんか」
俺が引き戻してまでこいつを助けた理由は呼ばれたからじゃないだろう。
「助けて土方さん」と言われたからではない。
俺はそんな声を今まで何人もの死んでゆく隊士から聞いていたんだ。
気にせず走る、それが副長の役目だったはず。
「僕はきっと最後まで一緒に走れないから、…次はきっと僕の番だから、…こんなところで土方さんも朔太郎も立ち止まってちゃ駄目だよ」
なにが「僕」だ。
全然似合ってねえんだよ。
聞いてると胸糞悪くて仕方ねえ。
こいつは常に覚悟しているのだ、次に命を落とすのは自分だと。
そしてそれでいいと納得もしている。
「怒るで梓」
静かな声だった。
朔太郎にしては初めてだ。
いつも煩ぇガキが、こうして低い音を発したのは。
「お前だけは俺より先に死んだら許さへん。…俺達は一緒に武士になるって約束したやろ」