浅葱色の約束。
そんなこと、わかっていた。
この子は決して意味もなく何かをするような子じゃない。
それにあまり感情を表には出さないような子だったのだ。
だからこそあの父親が目の前に現れたとき、僕は思わず刃を向けた。
『新撰組は人斬り集団だって、除け者の集まりだって言われて…、
それであいつは訂正しろって父さんに土を思いっきし投げたんや』
それでも一切そんな話を言わずに。
孤児だ何だと馬鹿にされたって梓はただずっと黙っていた。
それは僕達が傷付くから…?
子供のくせに気遣って、子供子供と思ってたのにいつの間にかそうとは言えなくなっちゃって。
簡単に触れられないし、今だって男ばかりの場所で大丈夫か毎日心配なんだよ僕は。
「私も刀を持てたら良かったのに…」
「梓は梓にしか出来ないことがあるよ。現に君が居なかったら医療班は壊滅的だ」
「……沖田さんが思ってるほど役に立ってないんだよ私」
僕の前では簡単に「私」って言ってるし。
隠そうと思ってるのかな本当に。
他の隊士の前では絶対に言っちゃ駄目だよ梓。
「副長……っ!!!」
───そんなとき。
息を切らして走ってくる1人の隊士。
隊服には血が付着しており、鉢金だってどこかに落としてきたのか、まるで死闘を繰り広げ何とか逃げ帰って来たかのような面持ちで。