浅葱色の約束。




「はっ……はぁ…っ、ヒュッ───!」


「梓、ゆっくり、ゆっくり吸って。大丈夫、…大丈夫だよ」



なにが大丈夫なんだ。
大丈夫なわけないだろう。

そうじゃない、この子が今求めているものはそんな言葉じゃなくて。


この子にいま必要なのは泣かせることだ。


けれども泣き声ではなく、彼女から溢れたのは力の無い笑い声。



「は……はははっ…は……、」



理性も感情もなく。

いま、梓の目の前は暗闇で染まっている。


今まで君はその目で何を見てきたの。



「なんで、なんで…っ、どうして、…生きるべき人間は…朔太郎なのに……っ」



この子はいつもそうだ。

生きるべき人とか、生きなきゃいけない人とか。

自分を一番に卑下して死んだ者のように扱って。



「あのとき…止めてれば…!!だから言ったのに…っ、言ったじゃん…、だから言ったんじゃん…っ!!
いつも私の言うこと聞かないから…っ!!いつもいつも勝手に走って行って……っ、」



梓らしくない。

やっと、年相応な姿が見れたと思った。



「───…私が……行けば良かったんだ…」



初めてこの子が誰かを責めた。


そして最終的に責めたのはやっぱり自分で。

ああそうか、と言うみたいに。

彼女は変に納得していて、小さく呟いたその言葉は梓の本心なのだと思った。


どうせ死ぬなら、どうせ襲撃されるなら。


───自分が行けば良かったと。



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