浅葱色の約束。




初めて言ったその言葉。


お母さんにもお父さんにも言ったことが無い言葉。

園長先生にだって、お世話してくれる保母さんの人にだって。


ありがとう───それだけはどうしてか言えなかった。



「…ここは確かに人斬りと恐れられているが、本当は皆優しくて良い奴ばかりなんだ。
トシだってああ言っていたが、そんなこと実際は思ってないはずだよ」



襖から射し込む月の光がすごく綺麗で、私はただ静かに見つめていた。

もしここが「ただいま」と言えるような帰る場所になってくれるのなら、どんなに幸せだろう。


どうしてかそんなことを思った。



「君次第で、全てが変えられる」



近藤さんはそう言って部屋を出て行った。


今日はとても濃い1日だった。

布団に倒れこむように身を預けてしまえば、すぐに夢の中へと───。



< 29 / 464 >

この作品をシェア

pagetop