浅葱色の約束。
それでもビクともしない近藤さんは、今度は私を見つめる。
その眼差しは初めて会ったときに似ていた。
「梓、」
逸らせそうで逸らせない。
ゆっくりと手を伸ばし、頭を撫でてくれる。
「───…大きくなったなぁ。」
『これを食べなさい』
『帰る場所はあるのかい?』
『…トシに怒られてしまうかな』
「梓、誕生日おめでとう。少し早いが…もうあれから4年も経つなんてなぁ」
「祝うなら、ちゃんと誕生日の日に祝ってくれなきゃ…。近藤さんが私の誕生日を作ってくれたんだから…」
「すまないな」
違う、謝って欲しいんじゃなくて。
この先もずっとずっとおめでとうって言って欲しいだけなんだよ。
18歳になったって19歳になったって。
私がお婆ちゃんになっても、近藤さんには毎年祝ってもらわなきゃ。
「また肩叩きしてあげるね近藤さん。きっと疲れてるだろうから。土方さんも…」
彼は顔を伏せたまま答えてくれない。
その代わり近藤さんは笑ってくれた。
「…ありがとう梓。自分の誕生日だというのに誰かの為に何かをしてあげる子は、梓くらいだな」
施設にいた頃、他の子供達がやってたの。
必死に何かを作っていたから少し覗いてみたら、その紙には「肩叩き券」と書いてあった。
お父さんにやってあげるんだって。
そんな憧れは確かに私の中にもあった。
その夢が1つ叶ったんだよ。
だってあなたは私の、私の……
「娘だと思って接していたよ。俺に、…父親を味わせてくれてありがとう」
お父さんなんだから───…。