浅葱色の約束。
土方さんは彼に背中を向ける。
今まで必ず肩を並べていた局長と副長が、ここにきて初めて向かい合っていた。
「…ありがとう、トシ」
「……俺の言葉、…全部奪いやがって」
私の腕を掴もうとする1つの掌。
パシッ───!!
「っ…!」
そんな彼の腕を初めて払ったのは、私だった。
拒絶した。
見開かれた目は今にも涙が零れそうだった。
「…囮なら……私がなる、」
近藤さんは手を握り返してはくれない。
呆れられたっていい。
もう何でもいいよ。
親が子を守るなら、子だって親を守る。
───私はもう子供じゃない。
守られて、この道を歩きなさいって言われるような。
手を繋いで、大丈夫だよって言われるような。
子供じゃない。
「私が新撰組の仲間だって言って投降するから……その間に土方さんと近藤さんは逃げればいい」
死刑だっていい。
「絶対に2人のことは喋らないから……少しだとしても、時間稼ぎにはなるよ」
私、口は固いんだよ近藤さん。
ずっと無口で無愛想だったから。
「慣れてるんだよこういうのは…。蹴られたり殴られたり、…そういうの、慣れてる…」
近藤さんに出会うまでの私は、ただ無意味に蹴られて叩かれて。
そこに私も何ひとつ感情なんか無くて。
自分の体すらも自分で守れなかった。
守ろうとも思わなかった。
それでも今、私の目の前には。
「やっと守れるんだよ…大事なものが出来たんだよ。…近藤さん、土方さん。
私はきっと、このときの為に“ここに来た”」
ここに守りたいものがある。
守らなきゃいけないものがある。
───…家族がいる。
わたし、今。
生きてるって感じがするの。