浅葱色の約束。




そうじゃないけれど、この「トシ」と呼ばれる人が優しい決断をしてくれるとは到底思えなかった。

一室の前に案内されると、襖に隠れた体を中に座る皆が気にしているよう。


そこにいるのはざっと8名程、10畳ほどの部屋に集まる男達。


思わず足がカタカタと震えた。



「土方(ひじかた)さんまで改まって何事だ?あ、無事に芹沢鴨を暗殺し終わって上から褒美でも出たってか?」


「静かにしろ。誰が公にしていいと言った原田(はらだ)」


「悪ぃ悪ぃ、そんな怒んなよ」



恐怖───そんな感覚が後から追い付いてきたらしい。


自分が凄く小さく見える。

とてつもなく大きなものに押し潰されてしまいそうだった。



「こうして集まってもらったのは他でも無い。実は皆に紹介したい子がいるんだ」



すると近藤さんは、場を盛り上げるように声高らかに言った。

それだけで特に重大な話で無いことを察すると、彼等は態度を和らげる。



「新しい隊士ですか?」


「でもわざわざ俺達にだけ紹介ってのも珍しいな」


「凄腕の剣士なのかもしれませんよ」


「そりゃお手並み拝見といきたいところだ」



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