浅葱色の約束。
『梓ちゃん』
『起きて、梓ちゃん…』
あなたは───…私の、お母さん…?
私と同じ程の背丈をした女は長い黒髪を揺らし、慈しむように見つめている。
息を切らせるように走っていて、生まれたばかりの赤子を毛布に包んで抱きながら。
何かから逃げるように涙を流して。
『梓ちゃん、ママの言葉を聞いてね』
お母さん、どうして泣いてるの?
どうしてそんなに苦しそうなの?
私を、どこへ連れて行くの…?
『あなたはこれから、きっと素敵な人に出会う』
『辛いことも苦しいことも…きっとたくさんある』
『それでもね、』
赤子は目を覚ますと、母親に手を伸ばしてキャッキャッと笑う。
なにも知らないからこそ母に抱かれた子は。
ただ純粋に笑うのだ。