浅葱色の約束。




『…変な男にだけは引っ掛かっちゃ駄目よ』


『ママみたいになっては駄目』



特にお金に荒い男と暴力をする男だけは絶対に駄目よ───。


なにを、この人は言っているの。
そんなの赤ちゃんに言う言葉じゃないのに。

とても無邪気な人なんだろうと思った。


それでいて笑顔が可愛らしい人───…。



『ごめんね…っ』


『ママを恨んで、憎んで、』



夜の明かりが消えた施設の前、目の前に置かれたポスト。

途端に赤子は泣き出す。


そう、もっと泣かなきゃ。

それでお母さんを止めなきゃ。



『…ごめんね、ごめんね梓ちゃん』



離れたくないって、家族は離れちゃ駄目なんだって。


そう言わなきゃ。



『それでもママはね、
あなたを産んだこと…後悔はしていないの』



だったらそんな場所から離れて。

そんな冷たくて寂しい箱の中なんか嫌だよお母さん。




『私をお母さんにしてくれて、ありがとう…っ』




誰かと同じようなことを言うから。


親とはそういうものなのだと、思った。



< 322 / 464 >

この作品をシェア

pagetop