浅葱色の約束。
『…変な男にだけは引っ掛かっちゃ駄目よ』
『ママみたいになっては駄目』
特にお金に荒い男と暴力をする男だけは絶対に駄目よ───。
なにを、この人は言っているの。
そんなの赤ちゃんに言う言葉じゃないのに。
とても無邪気な人なんだろうと思った。
それでいて笑顔が可愛らしい人───…。
『ごめんね…っ』
『ママを恨んで、憎んで、』
夜の明かりが消えた施設の前、目の前に置かれたポスト。
途端に赤子は泣き出す。
そう、もっと泣かなきゃ。
それでお母さんを止めなきゃ。
『…ごめんね、ごめんね梓ちゃん』
離れたくないって、家族は離れちゃ駄目なんだって。
そう言わなきゃ。
『それでもママはね、
あなたを産んだこと…後悔はしていないの』
だったらそんな場所から離れて。
そんな冷たくて寂しい箱の中なんか嫌だよお母さん。
『私をお母さんにしてくれて、ありがとう…っ』
誰かと同じようなことを言うから。
親とはそういうものなのだと、思った。