浅葱色の約束。




「もう嫌だ…みんなが居なくなるの、嫌だよ…、土方さんにだけは居なくなって欲しくない…っ」


「…俺だっててめえに居なくなられたら何の為に、誰の為に刀を持ちゃあいいんだよ」



人って不思議だ。

自分の命が一番大切なはずなのに、気付けば誰かの為に生きてしまっている。



「…俺にも後悔させてくれるな」



目の前にあの日の土方さんが居た。

夜だったから彼は髪を下ろしていて、切れ長の眼差しに吸い込まれそうだった。


とても綺麗な人。
気高くて、孤高で。


それでも発する言葉はぶっきらぼうで乱暴だから。

それが少しだけ可笑しかった。



「あのとき……お前は死にたくなかったから俺を呼んだんじゃねえのか」



初めて新撰組が撤退したとき。

助けて土方さんって、私は初めて土方さんに腕を伸ばした。



「俺は鬼の副長だ。例えどこかしらに情がある足手まといのガキが1人2人居ようが、そんなモン見ずに前を走らなきゃならねえ」



ポロポロと落ちる涙が彼の肩を濡らす。

その涙は哀しみからくるものに交えて、違うものがあった。



「ただ、…俺だってお前にゃ死んで欲しくなかったんだろうな」



土方さんは少し笑った。


背中に回る腕にまた力が込められて。




「てめえの命、───そろそろ俺に預けろってんだ」




土方さんは震える声で言って、震える手で私の髪を撫でる。


預ける…?命を……預ける…?


わからないよ、全然、わからない。

もし私の解釈で説明していいならば。


いい加減守らせろ───そう言っているみたいだった。



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