浅葱色の約束。
土方side




随分と埃だらけのその場所は、戻らなかった時間を表しているようだった。

京へと再び戻った俺達の待機場はかつて過ごした新撰組の屯所。



「副長…!おかえりなさい…!!」


「もう俺は副長じゃねえんだがな」


「いえ!あなたは俺達の副長です…!」



京に残った新撰組隊士と大坂城で匿われていた怪我人は、皆してこの場所に集まっていた。


とても、静かだ。


襖を開ければあんなにも賑やかだった一室には、もう今は俺と梓の姿しかない。

泣き腫らした目で縁側に座るそいつ。


ビー玉とやらを掲げ、じっと空を見つめていた。



「お前も今日は早く寝ろ。色々あったからな」


「…うん。…でも寝れるかな。寝れなかったら土方さん一緒に寝てくれる?」


「……俺ぁお前の父親じゃねえぞ」



掠れた声で「…うん」と、瞳を落とす梓の隣に腰かける。


俺もきっと今日は寝られそうにないだろう。

近藤さんの晒し首はとてもじゃないが見ていられない程の悔しさだった。



「…近藤さんは…やっぱり近藤さんだったね」



怯えることなくただ口を閉じ、その刃を受け入れた男の顔で。

どこまでも真っ直ぐな男だ。

だからこそ俺達を救った。



「私…、土方さんは大丈夫な人だと思ってた」



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