浅葱色の約束。
「おい前川邸も八木邸もいっぱいいっぱいだぜ。ガキの世話は寺子屋にさせときゃいいんだっつの!」
思わず引いてしまいそうになった。
その威圧感に今にも逃げてしまいたくもなって。
それでも背中に当てられた手が、それを許さぬようにぐいぐいと押してくる。
「こらお前達!いい加減にしないか!」
「だって近藤さん、確かにここは武士じゃなかろうが誰でも入れるけどよ、物好きにも程ってもんがあるんじゃねえか」
「そうだよ、どう見たってこんなひょろひょろじゃ刀すら持てないだろうし」
「誰が刀を持たせると言った」
騒ぎを制止させたのは近藤さんではなく、隣に立つ土方という男。
ずっと静かに黙っていたが、彼がスッと息を吸うと周りはピタリと鎮まる。
「こいつは小姓(こしょう)に置く。これは近藤さんと決めた決定事項だ」
「ちょっと待ってくれよ土方さん。小姓っつったって誰のだよ?」
「近藤さんだ」
処分じゃなかった…。
本当に近藤さんは、この土方と呼ばれた男に話を通してくれたのだ。
少なからずホッとしている自分にも驚いた。