浅葱色の約束。




「父様に会いに来たの?」


「…え…?」


「お花持ってここに来る人はみんな父様に会いにくるんだよ」



父様…。

この子は、この女の子は……。



「父様、きっと喜ぶね!」



死───。

その本当の意味を知らない純粋無垢な少女は、彼の最期をどう伝えられているのだろう。

胸が痛くなると同時に、どことなく近藤さんに似た笑顔へと手を伸ばす。



「…うん。君のお父さんに…会いに来たんだ」



風に揺れる柔らかい髪に触れ、優しく撫でた。

あの人が私にしてくれたように。



「たま!その人はお兄ちゃんよ!失礼なこと言わないの!」



お盆に冷たいお茶を運びながら縁側にコトリと置く先程の女性。


この人が近藤さんの奥さん、近藤さんの家族。

そしてこの女の子は血の繋がった娘。

命のつながりをこんなに間近で見れたことが何よりも胸を埋めた。



「ごめんなさいね…。あの人に似てしまったのか、どこか鈍感なところがあるの」


「…いえ」



───近藤さんはここに生きている。


そう、思った。



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