浅葱色の約束。
「あの子はあの人に会ったことが無いのよねぇ」
目の前で鞠つきをする少女を見つめ、母親は寂しげに瞳を伏せた。
渇いていた喉に冷たい麦茶が通ると、長旅の疲れを少々感じていた体がかなり回復する。
「父様はどんな人?どんな人?って良く聞いてくるけれど…
京に行ってからのあの人を私も知らないから何て言えばいいか分からないの」
例え両親が居たって必ず傍にいるとは限らない。
それぞれ必ず何かを抱えていて、それでもその中で幸せを探そうとする。
そこにある小さな幸福に全身全霊を注ぐ。
「…たまちゃん、」
私は立ち上がって、目の前で遊ぶ女の子に近付いた。
しゃがんで、そして目線を合わせる。
ニコッと微笑んだ瞳の奥に近藤さんが見えた。
「あなたのお父さんは…とても真っ直ぐで強い人だよ」
少女は手を止めて「もっと聞かせて」と、ねだった。
「誰よりも正直だから困っている人を放っておけなくて…それでいてとても愛情深い人」
「父様はすごい人なの…?」
「うん、すっごく。仲間を救うヒーロー…かな」
「ひぃろ…?それはなぁに?」
「…救世主。とても誇り高き誠の武士だよ」