浅葱色の約束。
沖田side




野良猫は今日も中庭を通って僕の目の前に来る。


黒く青い瞳をしたその猫は、まるで僕を試すかのようにじっと見つめて。

手を伸ばしてもその猫にすら触れられない。



「…婆さん。…僕、あの猫ですらも掴めないや」



あれからどれくらいの月日が経ったのか。


生きることに精一杯で、その小さくか弱く灯った火が消えてしまわないよう。

静かに、とても浅い呼吸を繰り返す毎日。


かつての仲間は皆どこにいるのかも、どうしているのかも、何ひとつ知らない中で。


僕はとても惨めに粘り強く命を繋いでいる。



「ゴホッ…!!ゴホッ!」



尽くす手は無い。
血を拭う力すらも無い。

痩せ細った体は刀すらも持つことは出来ない。


こんな体で戻ったって、きっとあの子を泣かせてしまうだけだ。



< 346 / 464 >

この作品をシェア

pagetop