浅葱色の約束。




ふふ、馬鹿みたいだ。

僕はとうとう幻聴が聞こえるようになってしまったらしい。


それも、とても未練がましい幻聴だ。



「沖田さんが来てくれないから、待ちくたびれて会いに来ちゃった」



どうやら幻覚までも。

あぁ違うか。


もう、お迎えが来たってことなのかな。



「…ここは……江戸だよ…」



ここには土方さんもいないよ?

起き上がることすら出来ない、惨めな若い男が1人居るだけなんだよ。



「あなたに会いに来たんだよ」



どうせ幻覚なら、もうこの際だ。

そんな都合のいいものを利用させてもらうのも許されるんじゃないか。


最期、なんだから。


ゆっくりと伸ばした腕は僕が掴むよりも先に彼女から触れてくれる。

あんなに、あんなにも触れることが出来なかったのに。


おかしいなぁ…。



「…あず、さ…?…どうして泥だらけなの…」


「へへ、あのね、途中で道に迷って転んじゃって」


「怪我は、してない…?」


「うん」



凛としていて、また美しくなったその少女は。

もう少女などではなく立派な女性となって。


僕の前に現れた───。








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