浅葱色の約束。
浴衣を着て、藤堂さんと3人で歩いたよね。
途中で雨が降ってきたから急いで戻ろうって。
「そのとき私、転んじゃって」
「…あぁ、あったね」
沖田さんは迷わず私を背中に乗せて、どしゃ降りの中走った。
私ね、あのとき、知らない世界を見たんだよ。
キラキラと全部が輝いてたの。
雨で濡れた木々や、沖田さんの髪。
水溜まりに反射して見えた自分の笑った顔。
───私ってこんな顔で笑うんだなぁって。
「すごく、楽しかった」
私あのときね、どしゃ降りになって良かったって思ったんだよ。
お祭りはもちろん行きたかった。
せっかく浴衣も着付けてもらった。
それでも帰る場所に真っ直ぐに走って行けるその幸せを噛み締めたら。
───時間が止まればいいのに。
そう思ったの。
「僕は、…一番最初に君の笑顔を見た」
彼は瞼を閉じて記憶を思い返す。
「はにかむ顔も、…思いっきり笑う顔も両方ね」