浅葱色の約束。
***
夜明け前、波打ち際に留まる船。
波が向かいくる度に潮風は男の短く切り揃えられた髪を揺らした。
漆黒のトレンチコート、黒のパンツ。
白いシャツを隠すようにコートから覗く黒いベスト。
首に巻かれたスカーフ、膝まで隠すブーツ。
そして───刀が2つ。
「暫しの別れ…か」
出航の汽笛合図が鳴り響く同じタイミングで太陽は顔を出した。
先頭に立ち、水平線の彼方を見つめる袴姿の女が1人。
瞳に秘めた揺るぎない覚悟は数多の命を見てきた証だった。
「みんな…、行ってきます」
約4年過ごしたこの町を離れる。
目指すは極寒の北の大地。
この先待ち受けるものは困難か幸福か。
カンカンと階段を登る音に先程の男は現れる。
「わっ…!」
「早朝の海風なめんな」
潮風に揺れる髪を見つめると、コートを乱暴に被せられる。
そんな隣に男は立った。
「ねぇ土方さん。あの先には何があるの…?」
少女はじっと見つめてポツリと呟く。