浅葱色の約束。
最終章
芽生えた想い
彼の名はその地でも有名だった。
新撰組副長、土方 歳三。
彼を一目見た兵士たちは皆して瞳を輝かせ、指揮官として目の前に立ったその男を誰よりも敬った。
「最近よく来るんですよあの人」
京に住んでいた時との違いは、建物にも現れていた。
彼等が寝泊まりする場所は洋館となっていて、ベッドや絨毯、全てが外国のものを取り入れられている。
懐かしいような、それでいて少し慣れないような。
そんな場所に変わらない袴姿は私だけでは無かった。
「どうにも気に入られてしまったようですね、土方さん」
市村 鉄之助(いちむら てつのすけ)。
まだ15歳の青年は、まるで記憶の中にあるかつての弟分にとても良く似ていた。
彼と私は土方 歳三専属の小姓として働いていた。
「綺麗な人…」
「榎本(えのもと)さんの妹さんらしいです」
ドアの先、少しの隙間から覗く私達の先に。
綺麗な着物を身に付けた女は、楽しそうに土方さんへと笑いかけている。