浅葱色の約束。
「お湯はこの薬缶(やかん)で沸かしてください。茶葉はその棚の2番目にあります」
案内してくれた人は、ずっと優しく微笑んでくれていた青年だった。
私を前にしても驚くことをせず、ただにこやかに近藤さんに話しかけていた人。
傍らに置いてある大きなたらいから水を薬缶へ注ぐと、私にそれを渡してくれる。
「そこに置いて」
そう言われたままやってみれば「うん、上手」と、褒められた。
その人は慣れた手つきで釜戸に火をつけながら呟く。
「…その傷、誰かにやられたんですか」
思わず右頬に触れると、ピリリと痛みが走る。
やっぱりまだ治ってないみたい。
それもそうだ、まだ昨日の今日なんだから。
1日がとても長く感じる。
昨日だって今日だって。
それでいて、もう2日目なんだと思わせる。
「…こ、転んだだけです」
そう、と男はそれだけ言って火をつけた。
そして初めてお茶を運べば、土方という人にこぼしてしまいそうになって「チッ」と舌打ちをされて。
「土方さんは昔からこういう人なんだ。気にしなくていい、気にしたら負けだと思って放っておきな」
楽しげに笑う青年は、小姓の仕事を一通り説明してくれた。