浅葱色の約束。
それでも彼は女を見ようとはせず机に向かい合う。
そんな光景はやっぱり土方さんだった。
微笑ましいのに、それでいて少しだけ胸がチクリと痛む。
───お似合いだ。
単純にそう思ってしまったのは、いつの日かに屯所に現れた彼の元恋人である多恵さんに雰囲気が似ているからだろうか。
「また来てる…」
それからというもの。
彼女はほぼ毎日この場所にやって来ては、土方さんの元へ向かった。
『あの人と土方さんはとても深い仲』
そんな噂も広がって。
「私がやっておきますわ」
お盆をひょいと、音沙汰もなく取られてしまった。
珈琲が外国からこの時代に入ってきて、それを飲む者が増えた中でも土方さんは日本茶がいいと言う。
前と変わらず調理場で湯を沸かしていたとき。
どこから現れたのか、女は妖艶な顔をして「あなたはどうぞ他のお仕事を」と言って私を追い出した。