浅葱色の約束。




「茶ぁ煎れてくれるか」



土方さんは相変わらず机に向き直った。


高い机に合わせるように背もたれのついた椅子。

最初は慣れないと舌打ちをしていたが、いつの間にか当たり前のように座っている。



「お茶ならそこにありますが…」



あの女の人が煎れたお茶が。

少し離れた場所にある客用のテーブル、その上に彼女が用意したであろう湯飲みが置いてある。



「煎れ直せ。その茶は俺の口に合わねえ」


「…でもせっかく煎れてくれたのに」



中身は減ってない。

きっともう冷めちゃってるんだろうなと、そう思ったのは湯気が出ていないから。

この人は熱いお茶が好きなのだ。


最初の頃、まだお茶すらスムーズにいれられなくて。

ぬるいとケチをつけながら飲んでいた頃があった。

それでも近藤さんは美味しいと言って啜ってくれたっけ。



「俺は不味い茶は飲まねえんだよ」



飲んですらないのに…。

それにお茶に罪はない。



「それと大鳥さんは旧幕府軍の参謀だ。小姓のお前が気安く話しかけていい人じゃねえぞ」


「…ごめんなさい」



そして睨まれてしまった。

土方さんの機嫌が今日は少しだけ悪い。


どうしてそんなに怒っているの。
怒りたいのは私の方だ。



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