浅葱色の約束。
「ふふ、あなたに言われる筋合いはないわ。どうぞお仕事をしてちょうだい」
確かに私が言う筋合いはない。
2人が恋人同士なのならば、どうぞ楽しくやってくださいにしかならない。
でも私は土方さんの小姓だ。
「ひ、土方さんなんか顔だけだと思います…。顔がいい人なんかそこらにたくさん居ますし…そ、それにやっぱり男の人って性格じゃないかと───」
「ほう、聞かせてもらおうじゃねえか。俺は顔だけで性格は何ひとつ取り柄がねえと?」
何故か鬼を起こしてしまった。
「そ、そこまでは言ってないよ…!なんて言うか土方さんにその人は勿体無さ過ぎると言いますか…その、」
「あ”?逆だろ。どうやらてめえの中で俺はかなり最下層らしいな。
…そんなこと言う奴ぁお前くらいだ」
「ちっ違うよ…!最上層だよ…!!」
しーんと静まり返る空気。
ふっと、彼はまた笑った。
そんなものに顔がカァッと熱くなる。
「ねぇ歳三さん。なにを子供にそんなに本気になってるのよ」
子供───…。
そうだ、私は子供でしかない。
追い付けなんてしないのだ最初から。
「それに男でしょあなた。それじゃあ立派な武士になんかなれないわよ?」
手を伸ばすことさえ、許されない。
「…ごめんなさい」
私、たぶん今すごく泣きそうな顔してる。
「いかないで」って沖田さんに言ったみたいに。
「家族は離れちゃ駄目」って近藤さんに言ったみたいに。
今度こそ本当に手放してはいけないものが、こんなにも目の前にあるのに。
───それはとてもとても遠い。