浅葱色の約束。




「歳三さんも何か言ってさしあげたら?仮にもあなたの小姓なんだから教育はきちんとしなきゃ駄目よ」



すると今度彼は隣の女を捉え、肩に乗った手をパシッと払った。



「お喋りな女だな。延々と海にでも話してろ」


「なによ冷たい。私は歳三さんのことを考えて言ってるのよ?」


「だったらまずその歳三さんっての辞めろ」



やがて言葉の意味を理解すると、女は顔を真っ赤にさせて震え始める。

やっと言葉を発したかと思えば彼は冷たく言い放ったのだ。


逆に可哀想になってくるほど。



「悪いが俺はてめえにゃ惹かれねえよ」


「な、なによ…、好いている人でもいるって言うの…?」



またこの感じだ。
懐かしい、デジャヴってやつだ。

それでまた私のことを「息子」だと紹介したならば。

私もそれで全てが解決する。
こんな想いにさよならが出来る。


彼にとって私は子供なのだと実感が出来るから。



「───あぁ。」



そりゃあ土方さんだ。

歩けば女の目を一瞬にして集めるような人だ。

女には困らない分彼にだって想う人はいる。


いいじゃないか、彼が幸せならそれで。
それが小姓が一番に望むこと。


ある意味これで私の小さな小さなよく分からない気持ちとお別れが出来る。

いつかその人に会ったら言ってやろう。
「こんにちは、息子です」って。



「…そう…なんだ…」



バサバサバサッ───…。


それでも考えもしなかった発言に、小さなつぶやきと一緒に手にしていた書類を落としてしまった。



「いるよ」



そんなもの気にすることなく、土方さんはもう1度完全に肯定をした。




「俺がもし誰かと所帯を持つとしたら、
───…そいつとしか考えられねえって女が」




ねぇ土方さん、どうして。


どうして……


私を真っ直ぐに見つめているの……?



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