浅葱色の約束。




「大鳥さんの言ってた通りだった…」



これは、この気持ちは、もう親子なんかじゃない。


家族───…。


それも少し違う。
それだけじゃないのだ。

小さな小さな炎は、この人を目にするだけで火力を増す。

自分じゃ抑えられないくらいに。



「…なに話してたんだよあのとき」


「……秘密」


「おい、隠さず吐け」


「もう土方さんは鬼の副長じゃないから…黙秘権は私にだってある…」



甘い甘い果実。

それでいて、ほろ苦くて、酸っぱい。



「それに土方さんこそ。なに、歳三さんって」


「俺が知るか。勝手に呼ばれてただけだっつうの」


「……歳三さん」



似合わない。
歳三さん、だなんて。

土方さんは戦場を駆け抜ける武士だ。

前しか見ない、止まらず走る、そんな人。


こんなにも平穏な呼び方は似合わない。



「歳三さん歳三さん」


「…面白がってんじゃねえよ」


「ふふっ。…でも“辞めろ”って言わないんだね」



それでも、もしいつかそんな平和な世の中が来たなら。

そんなふうに呼んでみたいって、少しだけ思った。



「…うるせえ、馬鹿」



この前の仕返しをするみたいに。

土方さんは困ったように眉を寄せて微笑んだ。








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