浅葱色の約束。
だからこそ俺も言えたのだ。
伝わらないからこそ言った。
伝わってしまったら逆に困る。
ただあれは俺の本心なんだろうなと、もう認めざるを得ないが。
「それはやっぱり多恵さん…?」
俺の顔を伺うような瞳がとても悲しげだった。
今にも泣きそうな顔で覗き込んでくる。
「───違う。」
そう答えた俺に、梓は少し瞳を輝かせた。今度は逆に喜んでいる。
こんなにも一喜一憂するとは珍しい。
あまり感情をそこまで表には出さないような奴だったってのに。
「じゃあやっぱり榎本さんの妹さん…?」
「違う」
「えっ、違うの…?」
「俺の一番嫌いな部類だ」
まさかこいつとそんな話をすることになるとは。
それでもこいつも年頃。
普段女で居させてやれない分、出来るだけ答えてやりたいとは思う。
「でも…すごく綺麗な人だったから…」
「そうでもねえだろ。ああいう部類は昔からちやほやされて生きてるせいか、中身が終わってんだよな」
「そ、そうなんだ…」
多少の罪悪感はあるが、それでも初めての恋を知ったこいつの相手は誰なのかと。
どうしてかそればかり気になって仕方なかった。