浅葱色の約束。




「土方さんは…どんな人が好きなの…?」



思わず沈黙が流れた。

パチパチと瞬きをさせながら見つめてくる眼差し。

鈍感っつうのはたまに物凄く質が悪い。


……待て。


さっきから思ったが、こいつ俺の話ばかりをしているような気がする。

俺にばかり質問をしてきやがる。



「…俺の話なんかどうだっていいだろ」



お前は鉄之助の話が知りたいんじゃねえのか。

だからこの機会に聞けばいいものを。



「ど、どうだって良くない…知りたい…」


「何故だ。俺はてめえのことを聞かれるのは好きじゃねえんだよ」


「……そうだよね、…ごめんね土方さん」



しゅんと肩を落とした梓。

どうして俺の顔色ばかりを伺うようなことをしてんだこいつは。



「…まぁでも、そうだな。大人で髪の長い、女らしい奴が好きだ」



だから俺は少し、試した。


そいつの反応を見るが為に真逆なことを言ってみた。

その顔色だけで全てが分かるはず。

それでも俺はそいつにそんな顔をさせてまでも、「悲しめ」と思っていた。



「…そう…なんだ…。そうだよね……多恵さんも…、そうだった……」



今にも泣きそうな顔をした梓は。

無理に笑っているからなのか、慣れないことをしているからか、その唇は既に震えている。



「───…お前……」



こいつが惚れてるのは鉄之助なんかじゃなかった。



< 376 / 464 >

この作品をシェア

pagetop