浅葱色の約束。
「…私は、…全然ちがうね…」
窓に反射して映る自分の姿を見つめるその背中。
短い髪に指を通す姿に、思わず腕を伸ばしかけたが。
「───…、」
ここで抱き締めてどうなる。
そんなことしたって、俺が一番こいつに酷いことをしてるってのに。
俺はゆっくりと腕を下ろした。
「…って、前までは思ってたんだがな。実際は違ったらしい」
クルッと向き直った梓に思わず目を見開いた。
ポロポロと涙が頬を伝っている。
もう隠そうともしていないそれは、ただ静かに流れていた。
それでも俺の今の言葉を聞いて「その続きを教えて」と、視線を送ってくる。
「実際は真逆だ、真逆。俺も自分で驚いてるよ」
俺だって誰かと所帯を持つことすら考えたことは無かった。
戦場で生きて武士として散っていければそれが本望だった。
「ま…ぎゃく…?」
「…あぁ」
それでも何故かあんなことを先日言った俺は、女々しい奴だと思う。
あんな伝え方しか出来ない俺はどこまでも臆病でズルい男だ。