浅葱色の約束。
「土方さん…趣味悪いね…」
「…てめえの趣味も中々に最悪だがな」
「そ、そんなことないよ!すっごく格好いいんだよ…!」
格好いい、なんざ。
こいつもそんなことを思うようになったのか。
「あっいや、あの、でも顔じゃないっていうか、もちろん顔も確かに格好いいんだけど、…なんて言うか、その、」
あたふたキョロキョロとする女に笑ってしまった。
初めて見る顔だ。
こいつがそんな顔をした。
「知れば迷い、知らねば迷わぬ……恋の道───…」
「え?」
「お前にぴったしの句だ。…そりゃ俺もかもしれねえがな」
俺の詠んだ句はやはりその通りだ。
あまり評価はされないが、それでも知れば迷うし知らなければ迷わない。
それでもきっとそれ以上を望むことは許されないようなそんな関係。
今の俺とこいつは。
「…他の野郎に目移りすんじゃねえぞ」
「え…?」
でもいつか、そんなものはあり得ないが。
それでも夢くらい見てもいいと言うならば。
俺が武士でもなく指揮官でもなく、普通の男として生きるような未来が来たとして。
そんな俺の隣に女の姿に戻ったお前が居たら幸せなんだろう、なんて思った。
随分俺らしくないことを思った。
「つうか、お前こそどんな奴が好きなんだよ」
自惚れてるわけじゃないが、こいつに俺はどんなふうに見えているのかと。
少し乱暴に涙を拭ってやれば、また顔が赤くなる。
そんなものがどうにも楽しかった。
「すっごく優しくて、口調も乱暴じゃないし鬼なんかじゃなくて…王子様みたいな人で、お前とかてめえとか言わない人…」
「…なんだ王子様って。んな奴ろくな男じゃねえに決まってんだろ」
梓は口元を隠すようにふふっとこぼす。
そうして俺を見つめ、
「…でも、実際は真逆だった」
そう言って照れたように笑った顔を、俺は一生忘れないだろう。