浅葱色の約束。
その子狐は頭に雪を乗せ、山から降りてきてしまったらしい。
どうしてこんなところに……危ないよ、早く戻って。
じゃなきゃ君は撃たれる前に踏まれてしまう。
小さな、命だから。
キィキィ───…。
どこか痛いの?足、怪我しているの?
お腹が空いているの?
毛布でもあれば包んであげれたのに。
「───…」
重なったのはかつての自分だった。
途方に暮れるように歩いて、乞食のように座り込んで。
誰かが迎えに来てくれるのをずっとずっと待っていた。
パァン───!!!
「ぅっ……!!」
銃弾が1つ、左足をかすれて貫通。
それでも抱えた1つの命を絶対に離さないように山道へ向かった。
「はぁっ…!!はっ…!」
がんばれ、がんばれ。
自分とその子に言い聞かせ、急な斜面を走り抜ける。
「あ…っ、」
ジャリッ───!
痛みに足を滑らせたのが最後。
体はこんなにも簡単に転がってしまうなんて。
「っ……!!」
転がり落ちるように斜面の上に放り投げられた体。
追っ手はどうにか撒いたけど、腕の中にいる子狐は息をしてるだろうか。