浅葱色の約束。
地面に湿った血はどちらのものか。
腕の力を少しだけ緩めると、小さな命はゆっくり立ち上がった。
キィキィ───…。
小さな声を鳴らして、山へと戻っていく。
その先に必ず親がいると信じて。
良かった…たぶんあの子は大丈夫。
……でも。
「……いたい…よ…、」
土方さん、息はできるの。
まだ呼吸はできるけどね、もう身体中が痛いの。
落ちた打撃で額から血が垂れている。
左足からも血はどくどくと流れ、傷は浅くとも痛みが尋常ではなかった。
こんなの今までだって何度もあったのに。
「いたい……っ、…土方さん、いたい…」
骨折だってした、脇腹を刺されたことだってあった。
それでもなんとか回復したのは。
それはいつも近くに誰かがいてくれたからだった。
「…ひじ、…か…た…、さん……」
もう駄目かもしれない…。
今まで運良く助かってきたが、そんなに甘くはない現実。
だって私は一番最初、トラックに轢かれて助からなかったのだ。
どこまでも青く広がる空は、初めて見た景色と似ていて。
「…おとーさん……おきた、さん……、さく…たろ…」
ここで誰かに見つかったとしても、見つからなかったとしても、確実に助からない。
せめて最期なら、彼の声が聞きたかった。
「ひじか…、た……さ…ん、」
『───梓、もう俺の手を離すんじゃねえぞ』
約束を守れないかもしれない。
あんなに嬉しい約束をしてくれたのは、あなただけだった。
哀しい約束ばかりの中で、土方さんだけは違った。
「ごめん…ね、…ひじ、かた…さん……、ひじか…た……さ…ん、」
もう「助けて」すら言えない。
命の最期はこんなにも呆気なく訪れてしまう。
「…会い、…たい……、ひじか…た……さ───…」
朦朧とする意識がプツリと途絶えた───…。
*