浅葱色の約束。
土方side




持てる力全てを使って、なんとか新政府軍を追い返したのは既に日が落ちる寸前。

明かりの灯る拠点へ戻るが、そこに見知った顔は無かった。



「鉄之助、梓は見なかったか」


「俺も探してるんですが…大鳥さんも居ないようで…」



あんなに動くなと言っていたのに、お前はいつもチョロチョロと動きやがって。

「必ず戻るから待っていろ」と言った俺にお前は頷いただろうが。


それなのに、なんで今度はてめえが居ないんだよ。



「土方君……!!」



そのとき、右腕を負傷した大鳥 圭介は息を切らしたように俺を呼んで駆けて来る。


薬の匂いが鼻をかすめ、信じられない光景が次に襲ってくる恐怖感。

戦は乗り越えたはずが、なにひとつ終わってなんかいないような気がして。



「山道の途中で倒れていたんだ!!」



胸の中をどす黒いものが埋めた。


青白い額から汗が出ており、その汗ですら流せなかった血の塊が付着し、体は冷たい。

左足から流れた血が袴に大きな染みを作っていた。



「斜面で転がり落ちている所を兵士は見かけたそうだ!左足は銃弾がかすれたんだろう、すぐに止血をしなければ…っ!」



どれくらいその山道とやらに放置されていたのか。

担架に乗せられ、静かに目を閉じるそいつの腕には弾が入った箱。

これを俺に届けるんだと、未だにしっかりとそれを抱いている。



「時折君聞こえるかい!!お願いだ、必ず生きて戻ってくれ……!」



目を覚ませ、なに寝てんだよ。

てめえは昔っから静かな奴だったが、それでも笑って泣いて。

戦から戻った俺を必ず迎えてくれるだろうが。



「土方君が居れば安心だと言っていただろう!!今、彼はここに居るよ時折君…っ!!」



なにをらしくねえ面してやがる、死んだ何だ言っても生きてんのがてめえだろうが。



「しっかりするんだ土方君!まだ息はある!!」



駄目だ、震えが止まらねえ…。

しっかりしやがれ。



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