浅葱色の約束。
祭り
太陽の光が直射して肌を焼く。
夏の終わりは近付いてるはずなのに、吹き抜ける風は涼しくなるどころかまだまだ日中は生ぬるい。
そんな屯所では、汗だくな隊士達はみんな揃って井戸場へと走った。
「梓ー!ちょっとこっち来いよ!」
ちょいちょいと手招きをしたのは藤堂 平助(とうどう へいすけ)。
巡察帰りの隊服を肩にかけて、そして桶に溜めた水を豪快に降りかけた。
全身に滴る雫がキラキラと太陽に反射する。
「いや反応薄っ!」
「…冷たい…」
「じゃなくてもっと騒ぐとかさ!お前って本当無愛想なー」
期待外れ───そう言うように藤堂さんはやれやれと首を振った。
こんなことは毎日慣れていたから、今更どうこう言うことじゃなかった。
それでも目の前で笑う男の顔は知らなくて。
「京の夏を甘く見るなよ梓!江戸よりずっとずっと暑いぞ!」
「う、うん」
「新八さんなんて去年、熱中症には気を付けろって言った数日後にぶっ倒れちまったくらいでさ」
今までは暴言を吐かれ、挙げ句に突き飛ばされたりもした。
それなのに藤堂さんは自分もびしょ濡れで楽しそうに笑っている。