浅葱色の約束。




「頑張ってください!もうすぐ産まれますよ…!」


「元気な女の子が待ってますよ…!呼吸を整えて───吸って、吐いて……力んで!!」



また場所が変わった……。
今度はどこ…?病院…?

出産台に乗っているのは…あぁ、あなたか。


私のお母さん。



「いたいぃぃ………っ」



汗だくになりながらベッドのパイプを握る人。

親族が周りにいることもなく、ただ数人の助産師さんに見守られて。

それでも産まれくる新しい命を懸命に繋ごうとしていた。



「ほらお母さん見えますか…!赤ちゃんの頭です!」


「茜さん頑張って…!!」



───…茜。

母子手帳に書かれていた名前と同じ。


やがて、いつかに聞いた声に似た新生児の音が病室に響くと。

ぐったりとした母親は涙を浮かべ、すぐに赤子に手を伸ばした。



「あずさちゃん……梓ちゃん、」



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