浅葱色の約束。




「おい、あんた!部外者は立ち入り禁止だ!」



蝦夷の地へと向かった私に、そこへ辿り着く前に兵士に足止めをされてしまった。


部外者かぁ…。

確かに着物姿だし、簪をつけているし…どこからどう見たって女だ。


それがこの場所に入れるなんて思っていなかったけれど。



「…じゃあこれ……、土方 歳三さんに渡してもらえませんか?」


「名は何と言う」


「…淡い色の着物姿で、簪をつけた“女”だと言ってください」



あれから数ヶ月。

もう、春が来た。


この町も桜は咲くんだよ土方さん。
私は元気にやってるから心配しないで。


手紙を強引に渡して背中を向ける。



「おいそこ!関係者以外とはあまり話すなっつってんだろうが!」


「すっすみません土方さん…!」


「ったく。間者だったらどうすんだ」


「それが、よく分からない女性があなたに手紙を渡してほしいと…」


「…女だと?」



もう、行かないでなんて言わないよ。

あなたはお父さんでもお兄ちゃんでもないから。


ただ元気でやっていればそれでいいの。


私の記憶の中の彼は、今もドアの向こうで微笑んでいる人。








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